医薬品開発(外用剤の製剤化について Part3)

2.クリーム剤  ※はじめから読む

旧薬局方では、軟膏剤に、クリーム剤も含まれていましたが、16局の医薬品分類において、両剤は分離されました。新しい医薬品分類では、クリーム剤は、水中油型または油中水型に乳化した半固形の製剤と定義されています。水中油型(O/W型)のクリームは親水クリームとよばれ、油中水型(W/O型)のクリームは吸水クリームとよばれています。クリーム剤は、水溶性薬剤でも油溶性薬剤でも配合には問題がありませんが、加水分解しやすい薬剤には使うことはできません。

2.1 親水クリーム

水中油型(O/W型)の親水クリーム(旧:親水軟膏)は、基本的には、化粧品のバニシングクリームに薬剤を配合したものです。

油溶性薬剤を配合する場合には、処方中の脂肪酸エステルなどの油に薬剤を溶解したのちに乳化を行ないます。ただし、通常、乳化は80∼90℃で行われるため、熱安定性のある薬剤に限られます。水溶性薬剤の場合は、水相に薬剤を溶解するか、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンなどの湿潤剤に溶解して乳化します。この場合にも熱安定性と加水分解しないことが必要条件となります。

薬剤には、ハロゲン、スルホン基、カルボキシル基、ニトロ基、水酸基、アミノ基などの極性基を持つ物質が多いため、薬剤をクリーム剤に配合すると乳化状態が悪くなる場合があります。もし、薬剤の配合により、乳化状態が悪くなった場合には、乳化剤の量を増量するか、乳化剤のHLB値を少し上げて、分離を防ぐようにします。化粧品に使用する乳化剤の量は油相の10%程度で十分ですが、前記のような極性基を持った薬剤が配合される医薬品のクリーム剤の場合には、油相の15~25%ぐらいまで増量し安定化をはかります。処方中にアルキル硫酸塩、脂肪酸セッケンなどのアニオン界面活性剤を配合して乳化安定性を増加させている処方もあります。しかしながら、アニオン界面活性剤と反応する薬剤を配合する場合には、これらのアニオン界面活性剤を使用できませんので、非イオン界面活性剤のみで乳化しなければなりません。

また、水溶液薬剤を水相に配合する場合には、クリーム基剤だけを調製した時のHLB値よりもHLB値を上げなければなりません。配合した薬剤により異なりますので、どのくらいHLB値を上げたらよいかについては、実際に実験を行なってみる必要があります。薬剤によっては、クリームの硬さに影響を及ぼすものもありますので、ワックスやロウの増減により調整する必要があります。

クリーム剤の中に、皮膚中の細胞間脂質に類似した液晶構造を持たせることによって、保湿等のスキンケア効果を高めようとする試みが行われています。医薬品に使用できる配合乳化剤(NIKKOL WAX-230)を使用すると、液晶構造の形成のために必要な処方検討が簡便化します。

TO BE CONTINUE


Facebooktwitterredditpinterestlinkedinmail

質問は受け付けていません。